スイスのジュネーブにおいて平成17年3月3日（木）〜13日（日）までの11日間、ジュネーブ・モーターショー（75th Geneva Motor Show）が開催されました。会場はジュネーブ空港から徒歩5分、鉄道のジュネーブエアポート駅から徒歩3分と非常に優れた立地条件にあるPALEXPO（パレクスポ）で、展示場面積は114,000m²となっています。今年は、国内ローカルショーとして始まってから100周年、国際ショーとなってからは75周年と“ダブルアニバーサリー”を迎えました。ショーのコンセプトも“The past, the present and the future” とし、毎年、ショーにおいては世界に先駆けた車や技術を提供してきましたが、これからも未来に向けたコンセプトカーや、デザインを発信していくと訴えています。

今年の出品者数は世界30カ国から261社、約900ブランドを数えました。展示構成は従来と変化はなく、ホール１，２はフォルクスワーゲングループとＧＭグループ、ホール４はトヨタ、日産、マツダ、ダイハツ、スズキと日本メーカーが大半をしめ、続くホール５はフォード、フィアットが、ホール６にはダイムラークライスラーグループ、ヒュンダイ、BMWグループが展示されていました。それら完成車メーカーに挟まれる形でホール１，２，４，５の中央付近にカロッツェリア系の出展者が位置しています。展示場は天井から吊り下げる形の照明になっていますが、メーカーグループ毎に独自の照明装飾で他社との差別化を図っていました。展示場面積は114,000m²と大きな会場なのですが、各展示ホールが区切られておらず、一続きであるためそれほど広いという印象はありませんでした。また各ブースも高さ制限が1.65ｍと低めであるため、ホール全体の展示が見渡せ、通路を歩いていても圧迫感を受けません。来場者にとってかなり見学し易いショーであるという印象を持ちました。一方、我々とは意識あるいは文化の違いが見えるところもありました。ひとつは各展示ブースのバリアーフリーについてです。ブースに15〜20ｃｍの段差がつけられており、スロープはアプローチの部分のみというブースが多く見受けられました。もうひとつは喫煙についてなのですが、会場内のいたるところに円筒形の灰皿が設置されていました。出品者がその灰皿の前で堂々と喫煙をしている姿や、会場内を歩きタバコをしているところと見た時は多少驚きました。同時に、日本やアメリカと比べて、禁煙・分煙の意識はかなり希薄であるという印象を持ちました。
各ブースの演出については、各社ともクルマを見せることに注力しているという印象で、ワールドプレミアを出展しているメーカーはそれとはっきりわかる展示をしており、東京ショーでも参考になるところがありました。歌やダンス等派手で騒々しい演出はあまり目にしませんでしたが、プレスの写真撮影用と見られる女性コンパニオンが予想以上に多かったことには驚きました。

また、ジュネーブショーの100周年／75周年を祝う目玉の特別企画として、スイスにおける車の発展を体験できるシネマセットが制作されていました。1905年からのスイスのモータリゼーションの歴史を実車、マネキン等で当時の風俗も再現した非常にユニークな展示になっていました。展示館の入り口の壁面を昔風の家をイメージしたものにしつらえ、脇には井戸も置かれ、大変凝ったディスプレイになっています。展示館内に足を踏み入れると、薄暗く照明を落としてあり、ディズニーランドのアトラクションを彷彿とさせます。当時の服装をしたマネキンが実車とともにおいてあり、まるで映画の1シーンを切り取ったような演出がなされ、見ていて飽きないものになっていました。展示館の出口付近には300ページにも及ぶ記念本、ゴールドとシルバーの記念コイン、2種類の記念切手の販売所があり、100周年だけにさすがに力の入れ方が違うという印象を持ちました。

今年はジュネーブショーにとって100周年と非常にメモリアルな年になりましたが、非自動車生産国という特性を生かし、今後どのような進化をとげてゆくのか、これからのジュネーブショーにも注目して行きたいと思います。